・前提となる厳格なルール:
役員賞与を損金算入するには、定められた期限までに税務署へ「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、届出通りの金額を、届出通りの日に支給する必要があります。届出後の金額の変更(増額・減額)は原則として認められず、変更した場合、支給額の全額が損金不算入となるため、極めて厳格な運用が求められます。
・経営上・資金繰りのリスク:
- 資金繰りへの影響:賞与の支払時期に多額のキャッシュアウトが集中します。売上が不安定な事業の場合、決算上は黒字でも、納税や賞与支払いの資金が不足するリスクも考慮する必要があります。
- 業績悪化時の柔軟性の欠如:届出後に業績が著しく悪化した場合など、正当な理由があれば、臨時株主総会の決議等によって賞与を不支給とすることは可能です。しかし、その場合、低く設定した月額報酬のみで役員個人の生活を賄うことになります。賞与の支給は「届出通り全額を支払う」か「全く支払わない」かの二者択一となり、柔軟な減額ができない点に大きなリスクがあります。
・個人のライフプランへの影響(デメリット):
- 将来の年金額の減少:月額報酬(標準報酬月額)を低く抑えるため、将来受け取る厚生年金額が減少します。この対策として、増えた手取りを原資とした個人の資産形成(iDeCo, NISA等)をセットで行うことが重要です。
- 万が一の保障の減少:障害厚生年金、遺族厚生年金、傷病手当金といった、万が一の際の保障額も標準報酬月額を基に計算されるため、手薄になります。
・税務上および社会保険上のリスク:
- 不相当に高額な役員給与:年間の報酬総額そのものが、役員の職務内容等に照らして高すぎると判断された場合、高額な部分が損金として認められない税務リスクがあります。
- 賞与の給与認定リスク:月額報酬が社会通念上、生活するには著しく低い金額の場合、年金事務所の調査で「賞与は実質的に毎月の給与の繰り延べ払いである」と判断される可能性があります。その場合、標準報酬月額が実態に合わせて再計算され、過去2年分に遡って社会保険料を追徴されるリスクがあります。